ステイホームで家族と過ごす時間が増えた。学校やサークル、バイトで忙しく、ほとんど家にいない大学生の三女も家にいるようになった。食べることが好きな彼女は、よくスイーツを作ってくれるので、それを一緒に食べる。コロナ太りが気になり始めると、スマホのアプリを使って一緒にトレーニングをする。一緒にスクワットをしている姿を見て妻が笑うのだが、私は一緒に何かできる関係がとても嬉しい。
わが家はステップファミリー※だ。妻には成人した3人の子どもがいる。私は結婚して5人家族になった。結婚して夫婦で新しい家庭を築いていくというより、できあがっている家庭に私が入っていくような感覚だ。結婚するときに、子どもたちの意思を尊重して養子縁組をしなかった。今ではそれが良かったと思っている。本当の父親がいるのに、私を父親と思うように仕向けるのはお互いに窮屈だ。無理やり家族という枠にはめても、気持ちがついていかないからうまくいくはずがない。それに私は親になった経験がないので、生物的な本能としての父親の自覚や気持ちが湧いてこない。お互いに培ってきた家庭のルールの違いをすり合わせたり、男女の違いによるストレスを感じたりすることは今もある。それでも子どもたちには、父親でも、お兄さんでも、友達でもない、振り分けようのない微妙な存在として受け入れてもらえている。子どもと一緒に出かけたときに誰かに「お父さん?」と何気なく言われたときの否定も肯定もしない家族にしかわからない微妙な雰囲気が、逆に家族の繋がりを感じさせてくれる。
今年、弟が結婚をした。嬉しい出来事だが、驚いたのは婿養子になるというのだ。新婦の家系に跡継ぎがいないことが理由だが、私の家系にも跡継ぎがいないのにと正直思った。結婚式当日に初めて新婦のお父さんや家族と話をして、とても良い人たちで、弟を気に入ってくれていることが伝わってきた。結婚式の帰り際、トイレでばったりとお父さんに会った。そのとき、「家族は血の繋がりだけではないので、弟を必要としてくれて、弟が幸せなら私も嬉しいです」と自然と口をついて言葉が出てきたことに自身で驚いた。
人と暮らすということは違いを受け入れることだ。血が繋がっているからこそ違いを受け入れにくいことがある。弟とはあまりコミュニケーションをしてこなかったが、弟のことを考えることが増えてきた。落ち着いたら、一度飲みに誘ってみようか。
※子連れ再婚家庭のこと。人口動態調査によると結婚した4組に1組が再婚。国の再婚家庭に関する調査はなく、ステップファミリーが抱える問題点に関しては関心が低く、ステップファミリーという家族形態の認知がまだまだ低いのが現状。
※トップの写真は私の家族とはなんの関係もない。