コラム 女と男

男性的ならば女性的ではないのか?

『女性性と男性性ってなんだ』の続きです。

私たちは「二者択一思考」という、そもそもの固定観念に囚われていることに、普段、気づいていません。意識に上ってこないレベルの、染み付いてしまった観念です。人生が波乱に富んでいれば、経験を経ていくうえでだんだん「二者択一思考」では生きていけないことに気づくはずなのですが……。

善か悪か。
正しいか間違いか。
勝つか負けるか。
静か動か。
光か影か。

“一次元の両極”に相反するそれが存在する、つまりこれらの対照的な言葉は「対極」にあり、「どちらか」であると思いがちです。そして、「どちらが本当のその人(モノ・コト)なのか」などという、二者択一思考に陥りがちです。

以前、末っ子が中学生のとき担任の先生(女性)が、末っ子のことを「Hちゃんは、しっかりしたところと、忘れ物が多いなどおっとりうっかりしているところとある。あれは計算高いということです。本当はしっかりしているのに、抜けているふりをしているんです」とおっしゃって非常に驚いたことがあります。その先生は「しっかり」と「おっとり(うっかり)」は、一人の人格に共存できないという固定観念を持っておられるわけです。そのために「決めつけ」が生まれてしまったのですね。末っ子は昔から天然ちゃんで、性格的に仏のようなところのある人で癒しの存在ですので、その先生にはがっかりしました(そもそも先入観が強く男子ばかり贔屓する先生でしたが)。あ、「しっかり」の対義語が、おっとりなのか、うっかりなのか、という話はここでは横に置いておきます(笑)。

私もよく誤解をされるタイプですが、小心者であり、かつ、大胆です。小さいころから声が小さくて人見知り。男性の大きな声が苦手で、見えない怖いものに怯えている一方、集団無視された中学時代の某運動系の部活では、先輩を巻き込んだミーティングで「私のことが嫌なら、その理由を言ってほしい!」と泣きながら伝えて、みんなに受け止めてもらって集団無視を解決したこともあります(いつかこの話も詳しくしたいと思っています)。人見知りが今や、俳優や著名人にインタビューする仕事をしています。ゆえに、そういう部分だけを見ると「小心者のふりをして」と思われてしまいます。

夫は、神経質、かつ、無神経です(笑)。細かいところに配慮でき仕事を綿密にこなし、家では散らかっているのが嫌いで、ちょこまか片づけます。その一方、洗濯物の干し方は、驚くほど雑! Tシャツの肩が左右で歪んでいる、タオルの端は揃っていない、長袖が片方だけ裏返ったままで乾いていない……。

だいたいの人(モノ・コト)は、「どちらか」ではなく「どちらも」持ち合わせているものであり、広義的にはすべては同じである……とも言えると思います。

「太極図」に示されているように「陰極まれば陽となり、陽極まれば陰となる」。陰陽・善悪・正誤……性質など両極どちらにもなり得るものではないでしょうか。映画のヒール役だって、前半のストーリーでは主人公をサポートする善人だったりするでしょう。

前回、女性性と男性性の話に、「5エレメント」の話を入れ込んだのは、「性質」が2つしかないと、それらが一次元の両極に存在すると捉え、二者択一思考になってしまうので、それを避けたかったからです。「性質」というものはどんなことでもそうですが、「どちらか」ではなく「どちらも」あるのが普通だと思うのです。

どちらに傾いているか……という考えは、心理学でいうところの「類型論(タイプ論)」的な考え方であり、どこかに当てはめてしまうことになってしまいます。私が伝えたいのは「特性論」に近いことかもしれません。特徴的なそれぞれの「要素(特性)」をどれくらいの比率で併せ持っているか。

女性性と男性性についても、そのような見方をすべきではないかと思うのです。つまり、一人の人を女性性と男性性で見たときに、どちらかに偏っているのではなく、それぞれがどちらも持ち合わせているのではないでしょうか。

女性性と男性性を一次元的に捉えた場合、こうなっちゃう

男っぽいのに女っぽい?

実際にそれを提唱していたサンドラ・ベムという精神科医がいました。“男性性と女性性は本来、別の次元を構成するものであり、したがって男性的でありかつ女性的であるというようなあり方も可能だ”とするものでした。彼女は「ベム性役割尺度(BSRI)」というものを作りました。

つまり、「あの人は、男性的だから女性的ではない」というわけではなく、「男性的であり、かつ女性的である」という人が存在し得るということです。

ということで簡略化したテストをインターネット上でやってみました。でも、質問の観点がちょっと疑問(汗)。

「女性性(男性性)」、つまり、「『女性的(男性的)である』とイメージしている性質」は因習的なイメージに依拠しており、国や文化、時代、状況、経験などに由来した固定観念によって個人差があるものではないでしょうか。そもそも曖昧なものであり、どんどん変化し続けていく指標であることを考えると仕方ないのかもしれません。

「私の思う『女性性』『男性性』」というのを、みんなで出し合ってみるのも面白いかもしれませんね。

数年後、サンドラ自身が新説を打ち出し、「ジェンダーには、ジェンダーを構成する実体的な特性があるのではなく、文化的に構成された情報処理のスキーマ※として、特定の行動や態度・嗜好の特徴を、女性的であるとか、男性的であるとか割り振るものである」と説いたのだそうです(放送大学『人格心理学』テキストより)。さらに、ジェンダー、女性性と男性性とは、人格の特性というよりも、「社会的に人々が相互作用していく際の1つの共同の参照枠」としての『文化的レンズ』である、という見解を示しました。

また、このテキストを書いた京都大学大学院准教授 大山泰弘先生によれば、人格を研究する際にはジェンダーというカテゴリーそのものに関して、反省的に捉えられていく必要を説いておられます。確かに、一歩間違えると性差別などの問題へと発展しがちな繊細なテーマだと思います。

指標としての「女性性」「男性性」

とはいうものの、私自身は、個人が自分自身と向き合うときのために「女性性」「男性性」という指標は残しておきたい。

ゆえに「ジェンダー」と、「『女性性』と『男性性』」については、切り離して捉えたほうがいいのではないかと私は思っています。

個人の心を掘り下げるとき、男女のコミュニケーションを見つめるとき、「女性性」と「男性性」という指標も重要だと感じるのです。

やはり私たちは「性」によって体つきが違うわけで、「形状」が違うということは、やはり思考や言動に少なからず「差」が存在するわけですから、指標のひとつとして捉えていけばいいのではないかと思います。

どんなこともそうですが、「指標」や「分類」って、一つのものの見方であり、人のジャッジや批判に使用するのではなく、客観的に(反省的にと同じ?)愛を持って対人関係に活かすか、自分自身の「心の成長」のための参照に使えばいいのではないかと思うのです。

つまり自身の「内省」と「成長」、そして、人間関係をよりよくするための参考に。その際、大切なのは以下のことを認識すること。

①女性性と男性性を「対極」と捉えずそれぞれを「指標」として捉える
②個人によって差があり曖昧なものである
③ジャッジや批判には使わず(自分への批判含む)分析・把握したら手放す

③の「手放す」も、とても重要だと思います。覗き込んでいたカメラのファインダーや、望遠鏡や顕微鏡の接眼レンズから眼を離して現実世界に戻るようなイメージです。

自身や対人に悩んだときに「傾向」をさぐり、“よりよく解釈していく”ためには女性性と男性性という視座が必要な気もするのです。

前回「女性性と男性性ってなんだ?」

私自身は自分のことを、長い間『女性性』が少ないと思い続けてきたのですが、どうやらそうではなくて、私のなかにある『女性性』と一般的に多くの女性が持っている『女性性』が異なるだけで、実は結構女性性は豊かなのではないかということ。

と書いたのが、そのことです。女性性の指標はいくつもあり、そのうちの多くは私には確かに共感できないものだけれど、一部は非常にたくさん持ち合わせているという自覚があります。そして、女性性も男性性もどちらも豊富なのだと、最近は、自覚し始めたのです。

そして、前出の「ベム性役割尺度(BSRI)」を基にした簡易検査をした限りは、私はそれこそ彼女の提唱したアンドロジニー(両性具有)という診断結果(このサイトでは『中性的』と表記されています)になりましたが、個人的には非常に納得しています。

女性的と男性的が、同じ69%ずつという結果に

※スキーマ:図式、計画、鋳型、枠組み、概念などと訳される。 心理学では、なんらかの対象を認識するときに使用する体系的なパターン(概念)のことを指す。例えば、対人スキーマとは、他者を認知するときに使用しているそれぞれのパターンを指す。シェマ(ドイツ語)と同じとする説もあれば、区別すべきだとする説もある。要するに、欧米の言葉を翻訳するからぴったりの解釈がなかったり、誰かの解釈が加えられたりして、実際に曖昧になってきているのでしょう。

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