振りつけのないダンスを始めた2017年12月から書いたコラムを集めたエッセイが80ページの紙の本になりました。2019年6月にAmazon Kindleで電子書籍を出版した内容に新たに記事を追加しています。身体が動きたいように動かす振りつけのないダンスをすることで、自身の考え方の癖や感情のパターンなどに気づくことができます。その気づきを受け入れ生活していくなかで感じたことを書いています。本を読み進めることで、ご自身のなかで何かが動き出すのではないか?と感じています。
執筆本「躍るたまねぎ」の「はじめに」より抜粋
私は本書をどういった人に読んでもらいたいのか、正直わからない。本書には一般的な書籍にあるような社会に役立つ情報も、あなたのモチベーションを上げる新しい概念も、あなたを感動させる物語も書かれていない。しかし、本書に書かれている言葉があなたの身体に作用し、何かしらの変容の「きっかけ」になることを私は知っている。人は食べたものでできているというが、言葉も身体に入れるという点において同じだと考えている。
本書に書かれているのは、偉人でも有名人でもないどこにでもいるような一人の人間の言葉だ。わかり合えない親子関係に悩んだり、人を信頼できないけれど孤独が嫌だったり、人に評価されたい、人に受け入れてもらいたい思いで行動するも、それで孤独になっていたりする私の言葉だ。それは私の心の開示であり、心の成長のプロセスである。
心の成長のプロセスを「たまねぎの皮むき」に例えられることがある。私たちは数え切れないほど多くの思考の癖、つまり概念にとらわれている。例えば「人前で怒りや悲しみの感情を顕にしてはいけない」も思考の癖の一つだ。私たちはそういった思考の癖を、まるでたまねぎの皮のように多層にまとうことで社会に適応しようとする。しかし、どんどん身動きが取りにくくなり窮屈さを感じて生きていないだろうか。そこで一つひとつの思考の癖と向き合い、たまねぎの皮のようにむいていくことで、私たちはより心地よく生きていけるのではないかと考えている。
本書の言葉は、私がむいたたまねぎの皮だ。それを身体に取り込むことで、あなたの身体は微細に振動し、心が動き始めるかもしれない。それが私の密かな目的である。
私はボディワーカーとして数千人の身体と向き合ってきた。その経験から慢性的な症状のほとんどの原因は思考の癖であると考えている。そして、身体から思考の癖を外していけることを知っている。それを実現するのがUnfolding Bodywork(アンフォールディング ボディワーク)なのだが、自由に身体を動かし躍ることでも外していけるのだ。
本書は、らくなちゅらる通信(プレマ株式会社発行)に2017年12月から2019年6月まで連載したコラムに加筆したものである。そして、まったく躍ることに興味のなかった私が躍り始めてから書いた原稿に絞っている。それで本書のタイトルを「躍るたまねぎ」とした。「躍る」は振りつけのないダンスを意味する。振りつけは思考で身体をコントロールするもので、窮屈さを生む。本書は躍ることでたまねぎの皮をむき、振り落としてきた成長のプロセスを書いたつもりだ。思考の癖の外し方といった直接的な「やり方」を伝える内容は思考の癖を生むので一切書いていない。本書を読み進めることで、私の体験から出た言葉から「在り方」の変化を感じてもらえ、あなたの「在り方」がほんの少しでも変化する「きっかけ」になれば嬉しく思う。